元ブルースピリットと五月晴れ

かつての戦友たちよ。
日々の鍛錬をおこたっていないだろうか

季節は巡り、新緑の映える季節となった。
気の緩みがちな時節だが、
諸君らは決して気を抜くことの無い様、任務にあたってもらいたい。
戦場での気の緩みは、
時として己が命を危険に晒すこともあるのだからして…

 

すまない、前置きが長くなった。
申し遅れたが私は、

元　旧アクロニア陸軍　ドラゴ小隊所属、
現在は　ここ、アクロニア中央部
ヘルベチカ邸にて護衛搬送任務に就いている

「ブルースピリット」改め、

コードネーム「バルサミコ」である。

 

 

 

 

今日は「とある品」を極秘に入手せよとの命を受け、
マスターと共に、はるか東、ファーイースト地方、
湿原内へとやってきた。

 

我がマスターは
かつてこの地に、度々任務（クエスト）で訪れていたらしく
その豊富な経験を評価され、今回派遣されることとなった。

 

 

ここでの一番の危険は

毒を持つ生き物でもなく、
安定しない足場でもなく

「背中を向けると途端に襲ってくるかかし」
そう聞いている。
なんと恐ろしい兵器なのだろうか。

 

 

 

敵のサーチにかかってしまった。
マスターが私から飛び降り、即刻排除に向かう。
ハリセン一本で。

 

たかが湿地帯となめてかかることなかれ、
ここは「自然という迷彩をまとった要塞」なのだ。
周囲を見回してみる。

 

 

ひよこ型兵器…

 

 

いのしし型兵器…

 

 

 

そして
 
魚型兵器。

 

 

 

 

 

 

 

…囲まれているではないか。

 

 

なんということだ。
魚を模したこれらの全てに
不自然な穴が空いている。

砲台か…、
はたまた…魚だけに魚雷というべきか

我々はいつのまにか
敵陣の真っ只中に飛び込んでしまっｔ…

 

 

「おし、到着ー。」
「ぐるるる？」

マスターが、怪しげな男に歩み寄った。
しきりに話しかけるものの、
なにやら険悪な雰囲気だ。

武器の闇バイヤーのようにも思われる。

「ま、そうゆうことで。」
「いらねーよ！こんなもの！」
「だって、渡してって言われたんだもん。テント。」 

 

マスターはそのまま押し付けるようにテントを渡し、
その場を後にした。

「おー、これ。ばるちゃんに似てるね」
「ぐっ、ぐるる…？」

一発も被弾することなく、我々は帰還した。

 

 

 

 

 

 

そして私はいま
信じられない光景を目にしている

なぜあれが…

 

 

 

 

 

ここに。

「とうちゃーん、お魚きたー！」
「おーう、よかったなー」

 

 

 

 

 

話を聞けば
あのときの闇バイヤーと交換していたのが
この魚型兵器だった。というわけだ。 

「お魚お魚」
「こいのぼりっていうのよ。それ。」

 

 

 

 

「やー、五月晴れですね。女将さん。」
「そうね。今日は柏餅でも」
「つくりますかー」
「おもちー！」

 

 

 

 

平和である…。
暴発しないか怖いところだが、
我が基地がもしもの事態に襲われた際の
「防衛」といった意味ではよいこと…かもしれない

 

「ぐるるる…」
「どした？ばるちゃん、さっきからまばたきしてないぞ？」
「ぐる？」

 

 

 

少々ヒラヒラしているのが気になるが。