SSブログ

ぶー君と黒い羽 [おえかき+]

ぶーくんと黒い羽.jpg

ぶー君はその日、ひとりぼっちでした。

 

 

ご主人がお出かけをすると言い、
倉庫に預けられてしまったからです。

物がいっぱいで、薄暗くって、
ときどきなんかを踏みつけて
ぐにゅっ」としたりする倉庫の中が
ぶー君はあまり好きではありませんでした。

 

 


丸一日たった頃でしょうか、
再び、倉庫の扉が開いて
ぶー君の額に薄く光が差しました。

『ごしゅじんがかえってきたぞ』
無造作に詰め込まれたガラクタの中から
やっとの思いで顔を出したぶー君は

 

知らない紫色の瞳に見つめられていました。

 

 

 


紫色の瞳の持ち主は
ご主人より一回り小さい、まだ幼い感じの女の子でした。
でもぶー君が、いったいどういう「どうぐ」なのか
女の子は知っている様子でした。

暴発事故を防ぐ為に、
ブースト使いは背中側からブーストを持ち上げます。

この女の子もまた、背中側からぶー君を抱き上げ
「まっしろだ…」
不思議そうにいいました。

慣れた手つきで背負いベルトを組み上げ、
点火ロックを外し、
いつもご主人がやるように、ぶー君を背負おうとしました。

背負おうとしたのだけど

 

 


女の子の黒い羽と
これまた黒い尻尾が
ぶー君に


ぷすり。


と刺さりました。
びっくりしたぶー君の口から火の粉が飛び出しました。

 

 

 

「ごめんねごめんね」
女の子は謝ってくれました。

「もういっかい!」
女の子は威勢よくいうと、
さっきより身振りを大きめに、ぶー君を背負おうとしました。
ぶー君はなされるがままに背中を預けました。

ぷすり。


ぶー君の口から、またもや火の粉が飛び出しました。

 

 

 

 

 

 

「ドミニオンじゃ、白い子はだめなんだね」
倉庫から取り出した
トニックウォーターをすすりつつ、女の子は言いました。
ご丁寧なことに、ぶー君の前にも
トニックウォーターが置いてありました。

ぶーくんは2回も「ぷすり」をされて、
すこしだけ むくれていました。

「ドミニオンはね、羽があるのに自分じゃ飛べないのよ」
ぶー君は初めてそこで女の子の黒い羽をみました。

黒くてギラギラしていて…
ご主人と行った洞窟で見た、こうもりのようにも見えました。
「だからね、ブーストがいるといいんだよね」

 


それから女の子はいろんなことを話してくれました。
ご主人と同じ「リッパナケンシ」になるのが夢だということ
ご主人は「アニキミタイナモンダ」ということ


むかーし「黒いブースト」と友達だったこと
「黒いブースト」には、
女の子の背中と同じように黒い羽がついていたこと


黒いブーストのことを話しているあたりで
女の子がしょんぼりしはじめました。
ぶー君はただただ、聞いてあげることしかできませんでした。


「また一緒に飛べる子がいたらなぁと思ったの」
理由はわからないけれど
黒いブーストは女の子の元から去っていたのでした。

 

 


「まぁ、白いのも可愛いよね!」
女の子はひらりと
ぶーくんをひざの上に乗せると

「ふかふか、ぷくぷくしてるのは黒ちゃんと一緒なんだね」
そう言いながら頭をなでてくれました。

頭をなでられたのは初めてでしたが
「ぷすり」よりはずっといいなと思いました。
少しだけ「黒いブースト」がうらやましくもなりました。

女の子は再びおしゃべりをはじめました。
ぶーくんは見た目はぼーっとしていたけれど、
それなりに真剣に聞いていました。

 

 

 

黒い羽の人がいっぱいいる町の話…


大きなドラゴンと遭遇した話…

黒いブーストの羽が木のツタに絡まってしまった話…

けばけばしいピンク色の
「アフロトカゲ」の話に差し掛かったところで
ぶー君のご主人が帰ってきました。

 

 


「どうだった?使えそう?」
「やっぱりね、だめだったの」
ご主人は女の子のことを良く知っているようでした。


「方法があるにはあるんだけど…」
「黒くなるの?」
「うん。よかったら、やってみてもいいけど」
「ん、でも…」

女の子はぶー君の目を見つめ
いいました。

 


「このこは、このままがいいとおもうの。」

 

 

 

 

 

夕暮れ時に差し掛かって、
「ありがとね」と言い残し、女の子は帰っていきました。

ぶーくんは結局、
女の子を飛ばすことができませんでした。
「このままがいい」とは言われたけれど
少しだけ悔しくなりました。



ぶー君に唯一出来ることは、
「人を飛ばしてあげること」なんです。



『なんにもできない』

そう思ったらまた悔しくなって
目の辺りがじわじわしました。

女の子になでられた頭が
まだあったかいような気がして
余計にじわじわしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

…それからどれくらいたったでしょうか。

 


再びぶー君は倉庫の中に居ました。
ご主人はまたまたお出かけです。

 

空き瓶や木材、
冒険で拾ったらしいガラクタの数々に埋もれながら
ときどき「ぐにょっ」と何かを踏みつけたりもしました。

ぶー君はそんな倉庫の中が
やっぱり好きではありませんでした。

しかし、今日は程なくして倉庫の扉が開きました。

見覚えのある紫色の瞳と出会いました。

 

 

 

 

 

ぶー君の前には
トニックウォーターが置かれました。
相変わらずぶー君は飲めなかったけれど、
「気分だよ、気分!」と女の子は言いました。

女の子はゆっくりとおしゃべりをはじめました。
ぶーくんは頷きながら聞いていました。

トニックウォーターがぬるーくなるまで
楽しいおしゃべりの時間は続きました。

なんにもできないけれど
悔しくなんてなりませんでした。

 

 

 

 

ぶー君に初めて ともだちができたのでした。

 

 

 

 

 

:::ぶーくんと黒い羽:::

 

 

 

 

 

 

--------------------------------------------------------------------

覚えてる人のほうが少ないかもしれない
ぶー君シリーズ第3弾です。
あいかわらずハンニンマエなご主人なのですが
いつのまにやら弟子(?)を従えていたようです。

女の子はいつだっておしゃべり。
誰かの代わりにはなれないけれど、
ぶー君はぶー君のままが一番だったようです。



共通テーマ:ゲーム
500000HITありがとうございますふぃー ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。